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名古屋大学附属図書館研究開発室オープンレクチャー「オープンアクセス:学術情報流通の新潮流」に参加してきました

前置き。日本図書館情報学会に入会のご報告。

先日、日本図書館情報学会に入会させて頂きました。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jslis/aboutjslis_1.html:image=http://wwwsoc.nii.ac.jp/jslis/images/logo_1.gif

図書館情報学の進歩発展に寄与することを目的とする。


日本図書館情報学会: Japan Society of Library and Information Science

学術情報流通に関する情報収集がメインの目的だけど、人との交流って意味でもお楽しみが☆

本題。名古屋大学附属図書館研究開発室オープンレクチャー「オープンアクセス:学術情報流通の新潮流」に参加。

さて本題。
日本図書館情報学会のイベントではないけれど、こんな勉強をしてきましたというご報告。

id:argさんのイベントカレンダーで知った*1名古屋大学附属図書館研究開発室のオープンレクチャー「オープンアクセス:学術情報流通の新潮流」に参加してきました。

  • 日時 2008年5月19日(月) 18:00〜19:15
  • 講師 三根 慎二(名古屋大学附属図書館研究開発室助教)
  • タイトル オープンアクセス:学術情報流通の新潮流
  • 場所 中央図書館5階多目的室
  • 概要 現在,学術情報流通,すなわち研究者による情報の生産とその流通・組織化・利用の一連のプロセスが,電子化されるにともない変革期を迎えている。オープンレクチャーでは,学術情報流通の基本的な概念について説明し,とくに現在世界中で高い関心を 集めているオープンアクセス(無料で制約のない学術情報のオンライン上での利用)について,最近の動向や調査結果を交えながら概説する。


名古屋大学附属図書館 研究開発室 - 教育・研究活動 - 活動報告 - オープンレクチャー


名古屋大学は毎日の通勤経路途中にあるけれど、駅降りて敷地内に入るのは久し振り。まして図書館に潜入するのは初。

大雨にもかかわらず、時間ギリギリで到着した時には既に会場内に約30名程の聴講者が詰めかけていて、資料受け取り講師の三根先生の目の前の席陣取ったらすぐ開始時間となりスタート。

早速脱線。講師は「オープンアクセスジャパン」の管理者の三根先生。

今回講師の三根先生、いつも購読している「オープンアクセスジャパン」の管理者である。

http://www.openaccessjapan.com/about.html:image=http://www.openaccessjapan.com/images/title.gif

本サイトは、学術情報流通に関して現在もっとも世界的な話題となっているオープン・アクセス(Open Access)の理念と実情について、日本語で情報を提供、交換することを目的として、慶應義塾大学文学部倉田敬子が研究代表者である科学研究費補助金による研究プロジェクト「オープンアクセス状況下における学術情報流通変容の総合的研究」と千葉大学文学部の土屋俊が研究代表者として実施している科学研究費補助金による研究活動「電子情報環境下における大学図書館機能の再検討(REFORM)」との協力によって設けたものであり、三根慎二(慶應義塾大学大学院)がこのふたつの研究グループの助言を受けて管理している。


Open Access Japan | オープンアクセスジャパン - Open Access Japanについて

文中にある慶應義塾大学文学部の倉田先生さんは、愛読している書籍の著者であり…

学術情報流通とオープンアクセス

学術情報流通とオープンアクセス

千葉大学文学部の土屋先生は先日参加したSPARCセミナー*2で講演されていた方。


#んんー、、僕も案外この分野にしっかりと足を踏み入れてきた感じかな。。:-)

やっと本題。学術情報流通とは。

さて、本題(笑)。

「オープンアクセス:学術情報流通の新潮流」と題したレクチャーの目的として次の2つを挙げられてスタート。

  • 学術情報流通の基本的概念
  • 現在の学術情報流通の動向・問題点

とくに、オープンアクセス

配付資料に入る前に、オープンアクセスについては新聞記事で取り上げられる程身近な話題になってきたんだ、と日本経済新聞2008年3月24日朝刊21面に記載された「科学技術情報戦」を紹介されていた。

これですね。

 日本経済新聞に,シリーズ物で「科学技術情報戦」が掲載されています。

 まず最初の「上」では,見出しに「研究の果実 日本守れず」,「『専門家の収集力』課題」があり,名大生田教授が最新の研究成果をホームページ載せていたところ,CIAやDARPAが「研究室のサイトをいつも監視」しているそうで,今では公開を止めた事例,京大山中教授の事例,NIIのサーバ(恐らくCiNii?)に中国からのアクセスが殺到し支障が出た事例などが紹介され,最先端の研究成果の情報戦がすでに起こっており,こうした状態に対応するため,JSTの研究開発戦略センターや理研の情報収集専門家の例が挙げられていました。
 次に「中」では,「論文,ネットに無料公開」,「学術誌高騰に対抗」という見出しで,大学図書館で学術雑誌が買えなくなっている状態が起こっており,コンソーシアム契約による購入を行っていること,研究者の動きとして,SCOAP3に対する日本物理学会の対応,NIHのPAP,Google Scholarなども触れられており,最後に倉田先生の「日本の情報発信力が低下すれば研究開発の力も落ちかねない」というコメントで締められています。


Open Access Japan | オープンアクセスジャパン - 科学技術情報戦(日経新聞)

またまた脱線してしまいますが、日経のこの記事、探そうと思ってググっても見つかりません。
池田先生のエントリ「日本の新聞サイトのリンクはなぜ切れるのか - 池田信夫 blog」を思い出しました。
オープンアクセスの話題にオープンアクセスできない…皮肉なものです(涙)。


さて、スライドは「学術情報流通とは」なんぞや?という基本が解説される。

ウィリアム・D.ガーベイの言葉「科学の本質はコミュニケーション」あり、アイザック・ニュートンの言葉「巨人の方の肩に乗った小人」あり、聞き手(少なくとも僕)の心をくすぐるプレゼンが分かり易くこ気味良いテンポでスライドがめくられていく。


因みにガーベイについては勉強不足。これ買おう(と思ったら中古商品でも売ってなかった)。

コミュニケーション―科学の本質と図書館員の役割 (1981年)

コミュニケーション―科学の本質と図書館員の役割 (1981年)


学術情報流通とオープンアクセス(二七六〜二八一頁)出典のスライドで、インフォーマルコミュニケーションとフォーマルコミュニケーションの説明(学術情報流通のモデルについて)も興味を惹いた。
2つの特徴について説明があり、両者には「正確性、信頼性の違い」があると云う。
僕がやろうとしているMy Open Archiveは、ポジション的にインフォーマルコミュニケーションなのかなーと思いつつ、正確性はさて置いて、信頼性をどのように持たせて価値を持たせることができるのか、インフォーマルコミュニケーションの既成概念の殻を打ち破れるのか妄想。

ともかくこの2つモデルがあってはじめてコミュニケーションは円滑に進む、とまとめられていた。

学術情報流通の電子化

学術情報が「冊子体」から「電子ジャーナル」へ移行してるんだけど、これにより学術情報の購入形式に2つの変化が生じてる、って話。
1つは、学術雑誌の購入形態。
価格が右肩上がりなので、まとめ買いして値引きしようとする「ビッグディール契約」や、よってたかって値引きしようとする「コンソーシアム契約」等、電子ジャーナル依然にはなかった購入形態がでてきたよ、という話。
一説によれば、2015年には(2007年と比べて)47%値上がりするのでは、と言われているそうで、大学・図書館は「新しいビジネスモデルが必要ではないか」と騒いでいるワケです。
もう1つは、学術雑誌の提供形態。
当たり前だけど、これまでは手に取って確かめることができる雑誌そのものを購入してきたけれど、今は手触り感のないビットに「アクセスする権利を購入」しているワケで、契約が切れた時にアクセス権限を維持できるのか、利便性とのトレードオフに問題点を見出されていた。

で、こんな状況(価格高騰、権利管理の複雑・煩雑さ)に嫌気が差してきて、気運高まってきたのが「オープンアクセス」ってワケだ☆

オープンアクセスとは

人の数だけ定義もあり、解釈も違うけれど、という前置きあり。

学術情報への、オンライン上で、無料で制約のない、アクセスの提供を目指す理念、運動

学術情報は公共財だから、商業出版社が寡占するのはけしからん、という話なワケです。

じゃ、いつからオープンアクセス運動が起こったのか。実はつい最近概念が明確化されたと云う。

2002年 Budapest Open Access Initiativeが基本理念策定
2003年 ベルリン宣言、ベセスダ宣言

2002〜2003年にオープンアクセス運動の下地ができてきて、世界中からの関心が高まってきたという話。
だけど、やっと新聞で記事になるくらい未だ一般人には馴染みが薄い話でもある。何せ学術情報の話題だからね。
僕的には、ここを切り込みたい。もっと啓発したいって欲あり。


さて、いよいよセルフアーカイビングの話題に突入。
機関リポジトリはセルフアーカイビングの主力の1つと捉えられているらしいが、アメリカでは231あるものの日本は83のリポジトリ数だよ、というスライド登場。
分母が違うので数に差があるのは仕方ないですね…分母も数値抑えて、%で上位国調査すれば、日本は結構やってるんだってのが分かるかも。
ただ、これだけ普及しているのは国立情報学研究所による次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業の効果があってのこと、と言及。
後の質疑応答で「5年先、83からどれだけ増えると予想されるか?」の問いに…
「根拠なく数字挙げたくないけど」と言いつつ「100は超えると思うが、頭打ちかも。どれくらいNII(国立情報学研究所)がお金を出してくれるか」
なんて会場から笑いを引き出していたけれど、会場からは「もうNIIからはお金出ない」とのつっこみが(笑)。。


無料サービスならもっと普及するのかな??(妄想)


オープンアクセス雑誌の(成功)例としてPublic Library of Science(PLoS)をご紹介。大体こんな話を聞くことが出来ました。

ノーベル賞受賞者で当時NIH所長であったハロルド・バーマス(Harold Varmus)が、…2000年11月に科学者のマイケル・アイゼン(Michael Eisen)とパトリック・ブラウン(Patrick Brown)と共に、パブリック・ライブラリ・オブ・サイエンス(PLoS: Public Library of Science)を創設した。その目的は、自社が出版した研究論文を出版後6ヶ月経ったら「PubMed Centralのようなオンライン公共科学図書館で利用できるようにする」ことを拒む雑誌にはもはや論文を投稿しないことを誓う公開書簡に署名するよう科学者仲間を説得することであった。 PLoSは大きな運動となり、180カ国の科学者から3万4千近くの署名を得た


ポインダーの視点: 10年を経て

聞き逃してしっかり記録できなかったけど名古屋大学のある先生も署名した、という説明があり、先見性ある方だったと賞賛されていた。

PLoSについてはid:Hashさんが面白分かり易くご紹介されているのでせっかくだからご紹介。;-)

PLoSの中の人達はかなりできる*2。研究の「すごさ」すなわちインパクトファクターで競っても有名ジャーナルには勝てないことをわかっており、自由を掲げて「あなたの持っている金の卵を、誰でも無償で利用できるようにしろ」と迫る。

そこにあるゲリラ的姑息さは否定できないものの、目前の利益の先、人類の未来を見ている。そんな風に感じた。そもそも何かに"勝つ"という発想自体が旧世代の考えなのかもしれない。リーナス・トーバルズみたいだ。


オープンアクセスジャーナル"PLoS"がひそかに凄い。 - バイオ研究者見習い生活 with IT


後の質疑応答で解説されたましたが、オマケ?に映し出された映像、ユーチューブから入手したとのことで、見つけました。記念に貼り付けておきます。:-)


嗚呼、PLoS、憧れるナー。

最後に

「研究者は知らない」「研究者は使わない」「研究者は変わらない?」といった刺激的wタイトルの最後を〆たスライドは、頷ける内容であり、且つ抵抗したいもやもや気分募り…分かっていながら手を出したくなる衝動に駆られたのでした。

・新しい電子メディアやシステムの考案とそれが学術情報の生産者・利用者である研究者に利用・受容されるかは全く別問題
・技術的に可能な事とそれに基づいた単発的な電子化とWWW上の公開は、失敗する可能性がとても高い。なんとか2.0


今読み返してもガツーンとくる〆のメッセージでした。

さて、どうする、My Open Archive

おわり

と、まぁ1時間ちょっとがあっという間に過ぎて、質疑応答も活発で、でも定刻になったので皆あっという間に解散・終了撤退な雰囲気になり、空気を読んで(本当はご挨拶とかしたかったけど)名古屋大学付属図書館を後に。

いつかお会いして、ゆっくりお話する機会が恵まれるだろうか、三根先生。
今回は基礎から最新情報まで体系的に、本当に勉強になりました。ありがとうございました。:-)

*1:[http://d.hatena.ne.jp/arg/20080510/1210411327:title=2008-05-19(Mon): - ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) - ブログ版]

*2:[http://d.hatena.ne.jp/keitabando/20080427/1209245286:title=第1回 SPARC Japan セミナー2008「研究成果発表の手段としての学術誌の将来」に参加した - 坂東慶太のブログ]