学術論文にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをつけてオープンにする流れに期待


フューチャリスト宣言 (ちくま新書)の第3章(フューチャリスト同盟だ!)で、幾何学の難題「ポアンカレ予想」を解いたグレゴリー・ペレルマンarXivへ投稿した論文が認められ、数学の「フィールズ賞」が決まった話題を引き合いに、茂木さんがこうおっしゃる。

…数学や物理学分野では、最初から論文をネットのアーカイブ上に置くということをやっています。インターネットの技術者たちに近い感覚だと思います。

フューチャリスト宣言 (ちくま新書)(一〇一ページ)

myopenarchive.orgも、そう。
活動趣旨を理解して頂ける人はやはり、茂木さんの云うところの「インターネットの技術者たちに近い感覚」の持ち主に思える今日この頃。

僕は基本的に「解放万歳」なスタンス*4なので自分の研究とかオーブンにしたいし研究室でやってることも声を大にして言いたいんだけど、オープンなサイエンスに詳しい人じゃないので権利問題とかが怖い。

拡張現実感の紹介エントリに学ぶ、専門研究の公開テク - バイオ研究者見習い生活 with IT

研究をしている人の多くは、こうしたオープンな考えを強く持ち、だがどうしても行き着くところ著作権の問題に行き着いてしまう。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、そうした壁を低くしてくれるのではないか、と期待している。


そんな折、著名なお2人が自身の論文にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付けてオープンしているのを発見。

伊藤さん池田さんだ。

WEB2.0の未来〔ザ・シェアリングエコノミー〕のムック本がインプレスより発行されました。…僕の出した内容もいくつか監修されています。それは僕のDBA(Doctor of Business Administration:経営学博士)に使う論文とかから抜粋したりした内容とかも使われています。

本当にクールな事はインプレスはこの本をCC BY-NC(v 2.1 JAPAN)のライセンスで発行してくれた事です。インプレスのサイトからこの本の各セクションのPDFバージョンがダウンロードできます。

Joi Ito's Web - JP: WEB2.0の未来〜ザ・シェアリングエコノミー

インプレスのサイトへ行ってみると、こんな説明が。スバラシイ!;-)

著作権表示"BY Digital Garage,Inc"を記載いただき、営利目的でなければ、再利用は自由です。ブログでの引用や教育テキストなどにお役立てください。

WEB2.0の未来 ザ・シェアリングエコノミー | インプレス R&D

そして池田信夫さんも。

NTT出版から出した私の修士論文(1997)が、絶版になって久しい。古本では入手できるようだが、最近、古いPCを捨てるときファイルを整理していたら、そのLaTeXファイルが出てきたので、コンパイルしてみた。PDFファイルで、約800KB。

…今でも古くなっていないと思うので、ccライセンス(著者名表示・非営利)で公開する。

情報通信革命と日本企業 - 池田信夫 blog


伊藤さんも池田さんもCCライセンスは「表示-非営利」を採用。


「いやー、、自分の論文なんかオープンにしたところで…」とおっしゃらず、こうしたモデルを参考に、そして契機としてハードディスクに眠っている未開の論文がオープンになることをちょっとばかり期待してみたい。

…何らかの事情でお蔵入りになっている・再利用できる形で公開されていない実験データを「ダークデータ」*1と呼び、それを解放せよという話。

「失敗」だと判断したデータを公開することは勇気が要りますし、競争相手の研究者を利する危険性を考えると、不必要なデータであっても自分の引き出しに隠しておきたい……と考えるのは自然なことです。従って最前線にいる研究者たちに「ダークデータを解放せよ」というのは無理な話でしょう。そこで大学や非営利団体、Google などの企業が主体となって、公開できるデータ(公共機関による調査や、古い研究データ)から公開していくという流れになるのでは、と思います。

POLAR BEAR BLOG: ダークデータを解放せよ


で、(ダークデータあるにしろないにしろ)パブリックなウェブに公開すると、どうなるか…

情報をpublicにすれば、タダでいろんなことができる。publicな場所がこうやって便利になっていくと、検索エンジンの価値が上がり、グーグルの価値も上がる。

Public space(Google) VS Private spaces(MS,Facebook) - アンカテ(Uncategorizable Blog)


結局はグーグルが潤っちゃうのかな(笑)。
まぁ、そんなことは置いといて、オープンにすると何かしら得るものがあると思う、という可能性への期待するのが大切、かな。


そんな未公開の学術論文を投稿・共有するサイトとしてmyopenarchive.orgは期待に応えるサービスを提供していきたい。

*1:言うまでもないが、勿論伊藤さんや池田さんの論文はダークデータではない