親父からのプレゼント


今年の春、65歳になった親父。


勤めていた会社も定年退職となる筈だったが、1年間だけ契約社員として社会人生活が延び、悠々のサラリーマン最後の1年を過ごして半年。そして残りも半年。

そんな親父が、お袋と相談して夏前に電話をかけてきた。
「退職金で、一生モノをプレゼントしたい」

オレに、ではない。妻に。親父の妻、ではない。オレの妻、に。

そういうところが親父らしい。


オレには2つ下の妹がいるが、妹と同じものを何故か妻にもプレゼントしたいとのことだった。
理由はともあれ、夏前から数ヶ月間、何を買おうか、何が欲しいか、妻とお袋との電話会議が断続的に続く。

そしてついに週末の土曜日がプレゼントの引き渡し、受け取りの日。
雨が降る中、車で実家に到着すると同時に、親父が「買い物行って来る」と出かける。

そういうところが親父らしい。


義母も同行だったのが照れくさかったのか、全く帰ってくる気配がない。
どーせどこかでパチンコでもしてんだろう。。

長男が「帰ろう帰ろう」と言い出し、とうとう親父とは会えず喋れずじまいに車のエンジンをかけると、やっと親父が帰って来た。
雨が降りしきる中、車内から孫と笑顔で一言二言挨拶して家の中に入る親父。

そういうところが親父らしい。


そして、オレもお礼などする間もないまま一言挨拶程度に言葉を交わして車を出す。

オレらしくもある。。


多分、オレにも退職金で何かを、とは思った筈だけど、口が裂けても言い出すことはない性格なのは百も承知だ。
「カナダに行くんだ」と伝えた7月下旬、「小遣いを」と言ってくれたが断った。
何を今更親父から小遣いを。


しかし、気持ちだけは受け取ったつもりでいる。


妻へのプレゼントは、一生モノってことで、ヴィトンのバッグと財布。
自分の妻へすらプレゼントしていないのも、やっぱり親父らしい。


どーもありがとさん。