紀要論文も卒論もオープンアクセスに!
こちら、親しき仲にある @actdifferent 先生が MyOpenArchive リニューアル記念に CC-BY で投稿して頂いた紀要論文。
Speech and Breathing / actdifferent | MyOpenArchive
紀要(きよう、英: bulletin, memoirs)は、大学(短期大学を含む)などの教育機関や各種の研究所・博物館などが定期的に発行する学術雑誌のことである。
紀要の学術的水準に関しては、その審査が簡素な査読水準に留まる場合や、査読を行わない場合などさまざまであり、手続き上、掲載される文章の学術水準はまちまちである。そのため、紀要での研究発表を研究上の業績として認めない組織や紀要を発行しない組織もある。
紀要論文には毎年多額の予算が確保され、多くの部数が印刷・製本される(と思われる。部数、根拠あるのかな)。主に機関内の先生方等へ(配付ではなく)配布、或は同分野の研究者の方へ配付するなどされ、保存用にある程度の部数を保管して残部は・・
多くの労力と多くの予算が投じられる割には、紀要論文てあまり陽の目をみない、そういった印象があります。(現場より中継)
こうした研究成果がウェブに公開され、誰もが無料で、著作権や使用権の制約なく自由に利用できたら・・必要としてる人が検索エンジン経由でアクセスする、誰かの役に立つ、そんな可能性は残ってたりしないでしょうか。
機関リポジトリ(以下、IR(Institutional Repository))で紀要論文を公開する傾向があるとも云われますが、では機関リポジトリと云う仕組みがない機関やそこに属する研究者はどうすればいいのでしょう。
先日のニュース*1で国公私立大学の機関リポジトリ設置数・率の最新情報を知りました。私立に至っては11%ですよ、11%。
国立大学 75(87%)
公立大学 17(18%)
私立大学 65(11%)共用リポジトリサービスについて : Kyushu University Institutional Repository (QIR)
私が属する機関も、残念ながら IR はありません。
しかし、せっかくの研究成果だからこそ公開可能とし、例え見知らぬ誰かでも構わないからアクセス可能としたい。組織に予算や理解が不足しているのなら、私個人にすらそれらがなくとも可能な範囲でやれることを。・・そんな想いに共感してくれる仲間(@de_12345、@omoon)とともに、IR ならぬ iR(individual Repository)と云う概念でリポジトリをつくってみた結果、前述の通り、サイトのコンセプトに理解をしてくれる先生から投稿を頂きました。
サイト運営者冥利に尽きます。多謝> @actdifferent
MyOpenArchive を2007年9月に立ち上げて間もない頃、論文公開に理解を示してくれそうな先生方に「是非使って下さい。先生の研究成果を公開して下さい」と、まるで IR 担当の図書館員の如く研究室を回った記憶が未だ新しいです。が、多くが一様に「いやー、私の研究成果なんて」「著作権がー」といった否定的な反応が多数。「ゼミ生の卒論とかどうでしょう?みんなの頑張った成果を」にも同様にネガティブ・・
でも、そういう成果に限って面白い、是非読んでみたい論文が多いんですよね。(現場より中継)
そんな僕の気持ちをも代弁してくれる方がいらっしゃいました。
紀要論文ってご存知ですか。
大学関係者ならみんな知ってますが、大学がその大学の教員の論文を、ノーチェックで載せてくれるところです。
大学教員が言いたいことを誰にも邪魔されずに言える場所なんです。
(中略)
私が言いたいのは、もっと積極的な側面。すなわち、学会の多数派には認められないだろうけど、思いつきのレベルで光っているもの(素敵な思いつき)、学会誌の制限(書式やページ上限)にとらわれない自由な意見の発表場所、としての紀要のあり方なのです。
誰にも制限されない表現、というのは大事なことです。
(中略)
完全にフリーな発表の場所が必要なんです。それが紀要の主たる役割です。ただ、紀要を書くためには、大学に雇用されることが条件になる。大学院生や、在野の研究者には敷居が高くなる。これはおかしな話です。是正すべきだ。
誰にも制限されない表現。
それを、組織にとらわれず公開する。
ざわざわ・・w
さて、私が提唱したいのは、フリーの論文投稿システムです。
イメージははてブ。
要は、研究者が自分の論文を自由に投稿するのです。紀要のように、それは自由に。思いついたことを書いて、まとめて、読みやすく加工して提出します。面白いと想う人は、「イイね!」ボタンを押す。あるいは、はてぶのように、スターマークをチェックする。
で、多くの人が「イイネ」と思った論文が常に上位に表示される。そういうシステム。
そして、それが多くの研究者にとって、業績になればよい。
投稿論文(査読付き論文)は一本も書いてないけど、自分のある論文は、500人に「イイネ」と言われたよ。あるいは、5人の専門家にイイネ、と言われたよ、というのがそのまま加点されて業績になる。それでイイじゃないですか。
(中略)
端的に言うと、そういうソーシャルな評価の場としての「プラットフォームの成立」。紀要論文をまとめるプラットフォームが完成することです。
こ・・これはもしや?!
[これはおっしゃる通り]「誰にも制限されない表現、というのは大事なことです。」> MyOpenArchive へ / 紀要論文とキュレーター - 死んで花咲くデッドボール URL
ついで、そのプラットフォームの上で生きるキュレーターが存在すること。サイエンスライターの仕事をオンラインでかつその人の視点で成立させ、あの人が紹介する論文は全部面白いよな、と「学術論文を庶民のレベルに返す仕事」を仕事として成立させること。日本はそれが一番弱いと思うからです。これは学会の人間にも庶民にもトクするお話ですよ。
誰かがやってくれないかな。
CiNiiやResearch Mapがオープンな論文公開のプラットフォームとして熟していく中に、このルートが生きていれば幸いです。
@cinii_jp の API を利用してつくられた、論文ったー(@ronbuntter)をイメージに、我々も API を公開して Tweet や Like が多い論文をオススメしてくれるボットとか、どうでしょ(違
いやいやそうでなくいやそれと併せて、サイエンス・コミュニケーターなみなさん(@fj_n、@kasoken、@tohkichiなど)とタッグを組み、「学術論文を庶民のレベルに返す」。
ここまでやってこそ、公開する意味が深まるお仕事ですよね。いや、お仕事のつもりでやってませんが。
まだまだ熟すどころかリニューアルして初々しさから脱しきれぬ MyOpenArchive ですが、「「埋もれている」論文は発掘する価値はない」と云われようが、「ボツネタ論文の投稿場所」*2と呼ばれようが、必要としてる人には声が届くんです!
ただ、「眠っている学術情報や研究成果」と云うコピーは一部の方々に誤解を招くことも少なからずあった模様で(経験値)、新しくなった MyOpenArchive では業界用語として灰色文献(Gray Literature)なんて呼び方変えちゃってます(スライド10/17ページ参照)。ちょっと守りに入ってる?
誰にも制限されない表現を組織にとらわれず公開し、学術論文を庶民のレベルに返す、このルートを確立できるよう、みなさんとご一緒に一歩づつ前進できればなと思います。
学位論文のサマリーを公開して社会還元をするのはいかが? - 発声練習
My Open Archive に卒業論文を ; Repository*Repository | COG LOG LAB.
てなワケで、紀要論文は勿論のこと、この時期「卒論」できたら真っ先に MyOpenArchive へー。
(追記 2011/1/10 9:00)
卒業論文、修士論文の公開について。指導教員と相談してね! - 発声練習
ね!
でもって、所属機関に IR があるならば、勿論そちら優先で!
IR が在るか否かはコチラを参照。
学術機関リポジトリ構築連携支援事業 │ 機関リポジトリ一覧
或は国立情報学研究所(@jouhouken)の次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業(@nii_content)に直接聞いちゃうとかw
MyOpenArchive は決して IR の敵ではなく、相互補完・共存共栄な関係にあると(一方的に?)想っておりますのでー。