2冊からのメッセージが僕の中で重なり合う。そして僕が感じ取ったもの。


もしあなたが「ウェブ時代をゆく」を(頭ではなく)心で読み、何かを感じて奮い立つ気分になっているのなら、次に読むのはこの書籍がいいと断言したい。
とにかくメッセージが重なるんだ。

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった


大学院でMBA取得後、銀行勤務を経てマイクロソフトでマーケティング責任者と働いていた著者(ジョン)が、突然仕事も恋人も全てを捨てて途上国に学校や図書館を設立支援するNPO「ルーム・トゥ・リード」を設立するノンフィクション。



マイクロソフトのマーケティング責任者として、アジア地域を中心に世界中を飛行機で飛び回る多忙と、その対価としての報酬に不満があったワケじゃない。
なろうと思ってもなれないポジションで仕事ができる満足度の方が高かっただろう…少なくとも仕事に没頭している間は…。

これが人生のすべてなのだろうか。(一四頁)
僕という人間は、経歴や仕事で定義されてきた。(五五頁)

と疑問や葛藤を抱くジョン。きっかけは3週間の長期休暇でネパールに旅行だった。
幼い頃から本が大好きだったジョンは、ネパールの小学校にある本のない空っぽの図書館に言葉を失う。
校長から「あなたはきっと、本を持って帰ってきてくださると信じています」の一言で、人生が変わってしまう程の決断をし、「途上国にルーム・トゥ・リード(本を読む部屋)を」と世界中に呼びかける、その為の人生をを疾走する。


社会起業家ジョンのストーリーに、すっかり夢中になって読了した。そして気づいた。
「「ウェブ時代をゆく」に書かれている多くと、メッセージが重なっているんじゃないか。」

与え、得る

ダライ・ラマの言葉から引用したこのメッセージ…

僕たちのいちばん基本的な義務は、この地球上で自分たちより「持っていない」人びとを助けることだ。(二三頁)
何かを与えれば、代わりに得るものがあると語る。(二四頁)

id:umedamochioが解説してくれた、はてな創業者id:jkondoの口癖と重なる。

ネットの本質は「知恵を預けると利子をつけて返してくれる銀行」(「ウェブ時代をゆく」一五九頁)

「へんな会社」のつくり方 (NT2X)

「へんな会社」のつくり方 (NT2X)


最近ちょっとづつこの言葉の意味を体感しつつある。もっともっと自分の考えや振舞いをオープンにすることで、よりよい人間・ウェブ(プロジェクト)になれる気がしてたまらない。アウトプットすることで、たくさんのフィードバックがある。
ネットでなくとも、ダライ・ラマが提唱してジョンが現実に体感したストーリーには圧巻する。そしてネットには更なる威力が潜在するんだと期待感が高まる。

最悪の選択肢は、何もしないこと。

最悪の選択肢は、何もしないこと。(三一頁)

人は何かを思いついても、中々実行にうつしきれない。言い訳はいくらでも転がっている。今を捨てたくない。だから、いいアイデアだけど僕には無理、と一人で発案して一人でボツにする。
だけどどうだろう。動いてみることで、他も動きだし、止まらない勢いで加速していく様を見たり経験したりしたことはないだろうか。

今、あるプロジェクトが産声をあげようとしているようだ。
きっかけはid:wada-san

今のウェブの技術を利用すると、ウェブ上に最新の最高の手術指導書が構築できると思うのです。

「ウェブ時代をゆく」から考えたこと - wada-sanの日記
と提唱し、id:umedamochio

こんな素晴らしいことに、われこそは、自らのウェブ技術を応用してみたいと思う人は、id:wada-sanにコメント欄などで連絡を取られてみたらどうでしょう。

ウェブ上に最新の最高の手術指導書が構築できる - My Life Between Silicon Valley and Japan
と呼び掛ける。
すると、次々とコメントが書き込まれ、この反響反応がすさまじい力となって人々を動かしはじめる。

正直、驚きました。
これだけの反響があるとは思いませんでした。
「ウェブで世の中の役に立つことをしよう」と提案すると反応があるというのは嬉しいことです。
とても勇気づけられます。
今回、多くの方からいただいたご意見をもとに私が考えているシステムのコンセプトをまとめてみました。

手術教科書のコンセプト - wada-sanの日記


どう動き出せばいいのか、ヒントは与えられた。
今回の事象を、僕たち一人ひとりはどう受け止めるべきだろう。
大切に思っていた諦めかけの夢や理想を、想いとして発信し、少しづつできる範囲で行動にうつすべきなんだ。

最悪の選択肢は、何もしないこと。(三一頁)

初めは小さくはじめるのがいい


前述のid:wada-sanは云う。

初めは小さくはじめるのがいい

手術教科書のコンセプト - wada-sanの日記


大きな理想を掲げても、いきなり大きくはいけないもんだ。そういこうと思うから、発想の時点で諦めかけてしまう。そう、小さな一歩こそ大きな成功。
そして一人じゃ何も成し遂げることができないことも、もう一度思い起こそう。信頼できる仲間に声をかければ、静まった池にポツリと落ちた雫の輪は自然と広まる。

本物の変化を起こすためには大勢の参加が必要(一七六頁)

と呼び掛けるジョン。
全米に図書館を建てたアンドリュー・カーネギーや伝染病と闘う(ビル・)ゲイツ夫妻のような偉大なる慈善活動家を引き合いにして、

僕たちのだれも、一人ではカーネギーの成し遂げたことを実現できない。でも、みんなで協力して、数十人(やがて数百人、数千人と増えていく)のエネルギーを合わせれば、カーネギーより大きな目標を描くことができる。(一七七頁)

という原則を思いつく。また、シカゴの起業家からも次のようなアドバイスを受けて原則が間違っていないことを確信する。

だれもがジョン・ウッド(著者)に心酔して、世界を救うために会社を辞めるわけじゃない。でも、十分な収入を稼ぎながら、キャリアのためでなく人生のために何かをしたいと思っている人は何千人、いやたぶん何百万人といるだろう。きみのような人があと一〇人ではなく、週に数時間ずつ貢献できる人が数千人必要なんだ。(一八〇頁)


また、ジョンは二〇〇四年末に起きたインド洋湾岸での津波震災を起点に、スリランカでの活動を通じて

枠がなければ人は創造性の筋肉を動かし、自分の役割を自分でつくりだす(二四〇頁)
人間は自由な判断を任されると驚くような能力を発揮できる(二四六頁)

と云う。人間の想像力と想像力はすさまじい。今回のプロジェクトが一体どういう展開になるのか、当事者としてどうかかわっていけるのかワクワクする。


ジョンだって週末起業からはじまった


ジョンは、友人から集まった本や資金を元にネパールの学校に本を届ける。学校にいる教師や子どもたちから感謝の言葉と笑顔を貰い、

僕は世界を変えたのだ。少なくとも世界のほんの一部を変えることができた。(四八頁)

と感動する点は、グーグラーやオープンソースプログラマー、そしてブロガーが

自分が書くコードが起こす「小さな奇跡」にわくわくする(「ウェブ時代をゆく」二三頁)

…感覚と体感的には一緒なのではと思った。誰かに受けた指示による結果ではなく、自ら興した小さな炎が、しっかりと世界に灯火を照らす。
例え他の誰かには見えない灯火でも、自分の存在をしっかり証明するものに、僕らはエネルギーを注げる筈だ。


とはいえ、高ぶった気持ちには現実が待ち伏せる。ただ、マイクロソフトでの仕事が未だ残っていることに一瞬熱意が冷めそうになっても

仕事を終えた夜なら時間がある。週末も。休暇も。時間を見つけてやれるはずだ。(五一頁)

という内なる意欲を奮い立たせるのは、好きで好きでたまらないからだろう。
時が経つのを忘れ、ひたすら没頭できる何かを見つけた時の、人の凄みをジョンからも感じ取れる。そして僕はどう人に感じとってもらえるだけ没頭できる「好き」を貫けるだろう。

で、僕は誰?

マイクロソフトを辞めてしまった彼は、自分自身を自ら定義しようと試み、こう自問自答する。

「仕事は?」と訊かれてどう答えるか。(八四頁)
「ネパールの貧しい地域に学校や図書館をつくる組織を立ち上げて、運営しています」(八五頁)

彼には自分の声がしっかり響き、そのことに誇りを感じる。


僕は自分を自分に、そして他人にどう紹介できるだろうか。
「学術論文のオープン化を推進する非営利プロジェクトを立ち上げて、運営しています」
かな。んんー、、未だしっくりこない。この点については、もっともっと自分自身を問い詰めて、しっかり響く言葉を用意したい。


想いは大きく、行いは小さなところから

マイクロソフトでは、「大きく行け、それができなければ家に帰れ」と言われていた。これこそ、何か変化を起こしたいすべての人に送るアドバイスの核心だ。(一三九頁)

…を肝に銘じて動くジョンは、マイクロソフトで学んだ多くをNPO組織運営に役立てている。
マイクロソフトに居合わせることのない僕や他の読者も、こうした組織のDNAをちょっとは感じ取れるのではなかろうか。
またアマゾン・ドットコムを設立したジェフ・ベゾスが、未だ一冊も本の売り上げがないうちから「地球最大の書店」と宣言していたことを引用し、

アマゾンは、自己実現する予言の典型的な例(一四〇頁)

とも云う。
そう、夢や想いや志はとてつもなく高いところに設定しないと、ちょっとの成功に満足して先へ進めない。
僕「君の夢は?」
僕「世界中の学術論文をアーカイブしているウェブサイトにすることだよ」

んんー。もっとひねった表現ができる筈。これも宿題だ。

ジョンからのアドバイス


自分の人生の選択に間違いがないと確信したジョンから、アドバイスがあるのでご紹介。

世界を変える手助けをするために自分の人生を少し変えてみようと思っているなら、僕の心からのアドバイスをひとつ、考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみること。(二四六頁)
最大のリスクは、たくさんの人が、あなたを説得して夢をあきらめさせようとすることだ。世の中には、うまくいかない理由をあげることが大好きな人が多すぎて、「応援しているよ」と励ましてくれる人が少なすぎる。(二四六頁)

冒頭にも書いたけど、耳の痛いアドバイスだよね(笑)。わかってる、けど行動を伴った「わかってる」ではない。まだまだ。基本は動く、だ。考えている暇があったら、動こう。

また、id:umedamochioやジョンのような「けものみち」を行く人へのメッセージ、かな。

すぐに傷ついてはダメだ。…数当たるのは当たり前のこと、断られるのは当たり前のことと思わなくてはいけない。(「ウェブ時代をゆく」一〇四頁)

とあるが、ジョンも慈善活動に必要な心構えとして

重要なのは、相手の「ノー」を答えと思わず、何度でも可能性を追い求める精神がDNAに組み込まれていることだ。たとえば、僕は断られたらこんなふうに言う。「ダメですか?「いまはダメ」という意味ですよね?」

この、一見する「図々しさ」の精神が、「けものみち」で生きて行く為の必須要件なんだなぁ、と。
幸い?僕は典型的な?B型で、もう突進する亥年生まれだ(笑)。
これからはこうした精神を武器に、けものみちを突き進んでいくべきだね。


原動力は、オプティミズム

id:umedamochio

新しい事象を積極的に未来志向でとらえ、挑戦する若い世代を励ましつつアドバイスを与えることのできる「知的で明るい大人」(「ウェブ時代をゆく」一四頁)

が増えることが、未来の創造につながると仮説立て、

そのエネルギーはオプティミズムが支える(「ウェブ時代をゆく」一四頁)

と断言している。


ジョンも

楽観主義は報われる(二四三頁)

と云い、自らを楽観主義者と認め、「オプティミズムを貫く」姿勢の重要さを示している。
僕は三六歳という年齢に達している。僕より若い世代に、未だ何かをしてあげれるという十分な年齢ではないが、こうした控え目な姿勢はもうやめて「やるんだ!君ならやれる!」と後押しできる「個」を磨いておかなければ、ある時すっぽりと僕の存在が透明化するのではという危惧もある。
「知的で明るい大人」。これは本当に大目標です。そっち向かっていきたい。


いや、元気を貰った2冊だ。そして1つのエントリーで、また世の中が変わろうとしている。
今、確実にウェブ時代は到来しつつある。